世の中を“美術でのつながり”を探って、あらゆる分野で活躍される人物にインタビューするコーナー。
第9回は料理家・フードコーディネーターの冷水希三子さんです。
料理に関わるさまざまな分野で活躍されている冷水さん。具体的にはどんなお仕事なのでしょうか?
例えば、雑誌の料理コーナーでレシピを提案したり、ホテルの朝食メニューをディレクションしたり、ドラマの中で登場する料理を作ることもあります。その時々で料理家やフードコーディネーターなど、肩書が変わることがありますが、どう呼ばれるかはこだわっていないんです。さまざまなシーンでクライアントが求めること、伝えたいことを料理で表現する仕事ですね。
そんな多様な依頼に合わせて作り上げられる、料理や盛り付けのインスピレーションの源となるものは?
ひとつには学生時代から洋書や洋雑誌が好きでよく見ていたので、自分の好きな構図やイメージの引き出しがたくさんあるのかもしれません。もちろん、海外の食文化に触れたり、その土地の空気感を感じたりと、新たに経験することも大切。
実際にメニューを考えるときは食材をずらっと書き並べて、頭に浮かんできた素材の画像や味を頭の中で組み合わせるんです。“頭で食べる”みたいな感覚ですね。それを形に落とし込んでいきます。
素材から全体をイメージして作り上げる。美術の学びにおいて大切な「造形的視点」が生かされているように感じます。冷水さんが美術や造形的な視点を感じる場面はありますか?
日常のほとんどのことから美術が学べると思うんです。空の色も毎日変わるし、季節によって光の色や野菜の色も違います。もちろん、常に美術のことを考えているわけではありませんよ。つまり、そのくらい難しいものではなくて、何かを見て“きれい”と感動する感覚は、美術だけでなくいろいろなことの基本ですよね。私の場合、農家さんから届く野菜の色や形にいつも感動しています。それによって、どういう料理にするかも変わってくるんです。ひとつひとつの素材のよさが仕上がりのよさを決める。これもひとつの造形的な視点なのかなぁ……。
では最後に、冷水さんが美術の授業を1時間受け持つとしたらどんな内容にしますか?
そうですね。色とりどりな野菜を用意して、自分なりのサラダを作って盛り付けてもらうというのはどうでしょう。白い野菜だけにする子がいたり、いろいろ混ぜる子もいたり。お皿も選べれば、組み合わせの勉強にもなりますよね。普段、意識せず見ていた野菜をよく見て、よく考えると思うんです。そうして今までと違う見方や考え方ができるようになってくれたらうれしいですね。