ここがポイント
学び合いの効果
子どもたちが互いに自分の意見を発言し合い、学びを深めていく主体的な学習形態がクローズアップされてしばらく時間が経ちました。一人では到達できなかった領域に到達できたり、違った視点で対象を見つめなおしたりする機会を生み出す「学び合い」の効果は大きいものがあります。
話し合いの活動について
今回、井澤先生は「モナ・リザ」を鑑賞の題材として設定しましたが、そこでの4人による学び合いにより、1人では気づかないことも、意見を出し合うことで各自の学びとして獲得していく子どもたちの姿を生みました。子どもたちが自分の心の中で温めていた思いとは異質の考えが、子どもたち一人一人が感じ取ったことに刺激を与えます。その中には発見した事実もありますが、それぞれの子どもたちが感じた感覚的なものが多く含まれます。友だちの意見を聞いた子どもたちは「なるほど!」と思った時点で、その意見を自分の感じ方として取り入れ、無意識のうちに自分のものとします。その納得の度合いが大きいほど、交わした感想は現実味を帯び、心の中で確固たる意見として形成されます。一見授業としては進展したかのように思えますが、各自の学びを大切にした学習の深まりや豊かさという点では弱さを見せることもあります。
一人で思考する時間
そこで「今回の鑑賞の授業であなたはどのように感じ、どのような考えを持ったのか」という点を大切に指導してあげてはどうでしょう。そのためには学び合いの後の静かな、一人で思考する時間を授業の中に組み込むことが有効です。友だちの意見から生まれた新たな認識を個々の子どもたち自身が咀嚼(そしゃく)し、自分の感想とすり合わせる大切な時間となってそれぞれの価値観を育むことになります。
(シナリオ・監修、文 川合 克彦)