美術による学びの成長ストーリーvol.01
3年間の学びを通して育てたい生徒の姿

 中学校の美術による学びのチカラを、3年間の生徒の成長する姿に重ね、
読者と一緒に考える、連載コラムです。

 わからないことなどを、すぐに先生に聞くのではなく、まずは周りの友達に聞くことが仲良く、楽しく出来た秘訣だと思う。
 提出期限に間に合わないから妥協するというのは〇〇中学校美術には通用しません。
がんばって期限内に、今できることをやり尽くそう!!たくさん失敗した人こそすんごいものが作れます。
 失敗をおそれないで!!〇〇中学校の美術はすんごいよ!!

 この文章は、卒業間際の3年生に「君たちみたいに美術を楽しむ秘訣は何かな?後輩たちにメッセージを書いて」と最後の授業で書いてもらったもののひとつです。これだけではなく、全員が書いたものひとつ、ひとつに、それぞれの思いが込められています。

 そして、これらのメッセージから、 3年間の学びを通しての成長した姿が読み取れます。仲間と共に問題解決しながら協働の喜びと意義を感じ、失敗をおそれず取り組む事で、自分の可能性を最大限に発揮することの大切さなどを学んだのですね。それは、単に「絵を描いた」「作品をつくった」ということに留まるのではない、真剣に自己表現に向かい、創造的に全力で取り組むことを通して成長していった姿です。

 新しい教育課程の資質・能力の3つの柱、中でも「学びに向かう力、人間性」が、中学校美術でどのように培われているのかが手に取るようにわかります。

 さて、今回から始まったこの連載ですが、はじめて入学してきた1年生が、中学校「美術」と出会い、2年生、そして3年生へと展開されていく中で仲間と共に成長していく姿を、できるだけ具体的な事例を通して、みなさんと共有していけるものにしていきたいと考えています。

 今回は、私たちが中学校3年間の学びを通して育てたい生徒の姿のひとつとして、このエピソードを選びました。さて、こんな姿に出会うために、私たちはどのような中学校「美術」を用意していけば良いのでしょうか。一緒に考えていきましょう。

執筆者紹介

大橋 功
岡山大学大学院 教育学研究科 教授 (美術教育講座)

 

○専門分野
図画工作・美術科教育に関する学習指導と教育課程、教材開発に関する研究

○経歴
京都教育大学卒業、大阪市立淡路中学校、大阪市立城陽中学校、兵庫教育大学大学院学校教育学専攻芸術系派遣留学修了、大阪市立柴島中学校、佛教大学、東京未来大学を経て2011年より現職

○所属学会
日本美術教育学会理事、事務局長、日本実践美術教育学会会長、美術科教育学会会員、大学美術教育学会会員