ここがポイント
授業に集中できない生徒はどこにでも
普段あまり怒鳴ったりしない井澤先生が珍しく大きな声を出した今回の問題について考えてみましょう。
授業中にもかかわらず問題行動をとる生徒が出てしまうことは、教師なら誰しも経験のあることでしょう。「問題行動をとる生徒」と一口に言ってもその行動や言動、教師の指導に対する反応は個々によってまちまちです。授業以外の興味へ心が奪われている生徒、授業内容が理解できず面白さや興味を感じ取れない生徒、教師に対して反抗的な言動をとる生徒など千差万別です。教師がその原因を授業内で克服し、生徒と心通える指導を遂行するということはたやすいことではありません。いろいろな特徴をもった生徒がいるわけですから、特効薬のように効き目のあるオールマイティな指導などないのです。解決には一人ひとりの生徒の心に合った指導が必要になります。そのためには日ごろの観察から生徒の内面を洞察し、肯定的な評価ができる教師の力量が要求されます。
教室や美術室内で行われている授業中ですから、そこには問題行動をとる生徒だけではなく他の生徒もいます。授業の時間は確保されるべきで、指導のタイミングは注意が必要です。そして忘れてはいけないことに、日ごろの生徒に対して肯定的なとらえ方ができる教師であることがあります。なぜなら生徒のことを好きになれない教師のことは生徒も嫌うからです。
どのような授業が必要なのか
一般的な人の行動を考えてみましょう。人だかりができて、その輪の中心で何か楽しそうなことが行われているとしたら、誰しも何だろうと見たくなります。人の前向きな行動には、多くが興味をもつわけです。その輪に何らかの理由で加われない生徒は、その授業から離れていきます。
では子どもたちを惹きつける授業とはどのような授業でしょうか? 授業が授業として成立するためには骨格となるしっかりとした目標があり、子どもたちが教師に認めてもらえる評価があることが重要です。そのうえで、「授業展開に動きを感じることができるか」ということが求められます。教師の一方的な一斉授業では、動いているのは教師一人です。つまり進められている授業の学習内容と生徒が学んでいることとは必ずしも一致していません。一致させていくためには、子どもたちの学習を子どもたちが深化させていく取り組みが効果的です。
教師は、生徒が学んでいることを理解して授業に組み込む対応力が要求されます。あたかも生徒と一緒に成長していくような姿勢で授業を楽しみ味わう教師像が子どもたちを魅了するのではではないでしょうか。
(シナリオ・監修、文 川合 克彦)