ここがポイント
年間指導計画をつくるということとは
各教科において、年間の指導計画を立案することは教科のもつ学びの本質と向き合う大切な視点といえます。たとえ年間で行うべき指導内容が「知識及び技能」として設定されていたとしても、それをどのように子どもたちに学びとして定着させられるのかということについては「思考力・判断力・表現力」などを育みながら、魅力ある授業展開をしたいものです。学習指導要領の指し示す各教科の目標と現場で展開される授業との間には、明確な具体例は示されていません。この間隔をつなぎとめ、発展させる役目を担うのが現場の教師ということになるのです。教科指導全体を俯瞰し、領域のバランスを考え、内容のまとまりごとに教科の目標を見据える視点をもつということは、年間指導計画を練るうえで大切な教師の仕事といえます。それを子どもたちとともにつくり上げるために、魅力ある題材を用意したいものです。そこで展開される授業の魅力が、「学びに向かう力」となり、ひいては「個々の人間性」を豊かに育むことにつながっていくのです。
美術教師はクリエイターだ
それではどのような題材を用いて、授業を展開させていくべきなのでしょうか?
まず、年間で行う授業を内容のまとまりごとに配置してみます。美術科の都合ばかり優先せず、季節感や学校行事など生徒を取り巻く生活を生徒の成長に合わせて設定することも大切です。私たちは、中学生の3年間での子どもたちの成長には目覚ましいものがあるということを忘れてはいけません。学習指導要領では2年生と3年生の学びは同一化が図られていますが、私たちは日頃、2年生の育みと3年生だからこそもてる視点には思った以上に差があることを感じとっていますよね。3冊の教科書はその育みをあたたかく丁寧に見つめているのです。年間の指導計画は3年間の学びの関連性を考慮しながら、そこでの学習主題とは何か? 学習する意味がどのようにあるのかを「指導と評価の一体化」という観点を考えながら設定していくべきです。
さて、ここでミュズが言うように教科書から学ぶべきことを考えてみてはどうでしょう。直接の具体例とやろうとする授業内容が完全に一致せずとも、見つめるべき題材の主題は参考になるでしょう。指導書なども研究してみると指導内容の広がりがイメージされ、自分自身の授業展開をも豊かに発想できるのではないでしょうか。この努力が教師の技量の一つなのです。
「つくり上げる」妙味を味わいながら授業を考える美術教師の姿は、一人のクリエイターの姿と重なりますね。
(シナリオ・監修、文 川合 克彦)