美術の先生が実際に立てられた年間指導計画を紹介、解説するコーナー。前回に引き続き、弘前市立第五中学校の髙橋憲司先生に解説いただきます。今回は、2年生の年間指導計画に焦点を当てて解説いただきます。
以下より、髙橋先生が立てられた2年生の年間指導計画の表がダウンロードいただけますので、ぜひ記事と併せてご確認ください!
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目 次
2.実際の年間指導計画を解説!
・4~7月:思いを伝える1枚の絵
・8月:咲かせよう日本の花
・1月:ジャポニスムって何だ?
・2~3月:この場面でこの封筒
1.2年生の年間指導計画、どうやって考えている?
2年生では1年生の時に学んだことや身に付けた資質・能力を、少し高めることを意識して計画します。鑑賞の活動においては、日本と西洋の美術の関わりを学んだり、視野を広げていくようなことを狙います。
また、3年生で行う題材を考え、そこで身に付けておくべき力をより強くイメージしながら、固定観念を崩すことを再三呼びかけ、思い切った表現方法や多様な表現方法・技法を積極的に提案しながら活動できる題材を考え設定します。
2.実際の年間指導計画を解説!
筆者が、2年生の年間指導計画を立てる際に、どんなことを意識していたのかを題材ごとに解説します。
4~7月:思いを伝える1枚の絵
赴任したときから「美術科で学校の文化祭のポスター制作を」との要求があったため、最終的にはそのポスターの原画になる作品が誕生する題材にしたいと考えました。しかし、ただポスターをつくる題材ではなく、自分の学校に対する思いや願いを絵として表すことを目的に制作させています。
主題を生み出す過程や構想を広げたり深めたりする過程にじっくりと長い時間をかけて、1年生で身に付けた絵の具による表現方法をここで存分に発揮させるような感じで計画しています。
8~12月:咲かせよう日本の花
自国、日本のよさや象徴するもの・雰囲気などを今改めて考え、粘土を使用して考えたことを一輪の花で表現する題材です。1年生編の「はじめに」で述べた「3年生で行う題材を考え、そこで身に付けておくべき力をより強くイメージし…」の意識が強い題材です。
1年生での「何と読むんでしょうか?」の題材に続き、粘土を主材料に用いて、より多様な表現方法・技法を使いながら、自由度も高めて思い思いに表現させます。
1年生では基本的なことを学び身に付け、2年生ではそれをベースにして表現の幅を広げさせたいと考えています。
途中2度に分けて2種類の日本文化に関わる動画を鑑賞する時間を設け、制作にもつなげる工夫をしています。外国人から見た美しい日本や日本らしい文化を紹介した動画と、日本が世界にアピールした日本のよさや日本らしさが分かる動画です。
1月:ジャポニスムって何だ?
浮世絵の鑑賞を通して、日本の美術作品が世界に与えた影響を知り、日本文化独自のよさを学ぶ題材です。知っているようであまりよく理解していない「浮世絵」を取り上げ、浮世絵が注目されることになった歴史的なきっかけを切り口に鑑賞活動を進めていきます。
小学校の頃から慣れ親しんできている絵の具や表現技法は西洋絵画的であることが多いので、世界的に注目されて認められた浮世絵の簡素な表現、デフォルメされ強調・単純化された表現の魅力に気付かせるような授業構成になるよう工夫しています。こういった表現の工夫は、漫画やイラストにも通ずるので、その後の表現活動や鑑賞活動にも生かされます。
2~3月:この場面でこの封筒
目的と場面を設定し、そこで使う封筒をデザインし制作する題材です。伝える相手や内容から主題を生み出し、感謝の気持ちや祝う気持ち、謝罪の気持ちなど表現をすることになります。
使いやすさの機能と美しさの調和を、市販の封筒の鑑賞から学ぶ機会を挟みながら、色画用紙、カラーコピー用紙などの材料や、接着剤、はさみ、カッターなどの道具を効果的に使うことも学びます。
水引を紹介し、専用の紙ひもを材料として用意することで、日本の伝統文化にも触れながら実践します。
「相手に伝えるための工夫」に力を入れた題材なので、3年生での活動に大きく影響を与える学びにしたいと考えています。
髙橋憲司
弘前市立第五中学校 教諭
○経歴
1997年 弘前大学教育学部中学校教員養成課程美術科卒
1998年~ 弘前市立第一中学校
2001年~ 平川市立尾上中学校
2006年~ 弘前市立津軽中学校
2009年~ 弘前市立東目屋中学校
2017年~ 弘前市立第一中学校
2022年~ 弘前市立第五中学校 勤務