vol.02 横浜市立篠原中学校 吉田 浩気 先生
詳しく解説!私の指導計画(2年生編)

 美術の先生が実際に立てられた年間指導計画を紹介、解説するコーナー。前回に引き続き、横浜市立篠原中学校の吉田浩気先生に解説いただきます。今回は、2年生の年間指導計画に焦点を当てて解説いただきます。

 以下より、吉田先生が立てられた2年生の年間指導計画の表がダウンロードいただけますので、ぜひ記事と併せてご確認ください!
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目 次

1.2年生の年間指導計画、どうやって考えている?

2.実際の年間指導計画を解説!
・4~6月:心地よい器~「用の美」を感じる茶碗と小鉢の制作~
・7月:命を吹き込むアニメーション
・8~10月:ビビッと伝える!アプリのマーク
・10~1月:木との対話から生まれるバターナイフ
・2~3月:思わず二度見する物件

1.2年生の年間指導計画、どうやって考えている?

 2年生のテーマは「想いを育む」です。美術を通して、自分のみならず、より多くの他者や社会生活と豊かに関わる視点を取り入れた授業を意識しています。

2.実際の年間指導計画を解説!

 筆者が2年生の年間指導計画を立てる際に、どんなことを意識していたのかを題材ごとに解説します。

4~6月:心地よい器~「用の美」を感じる茶碗と小鉢の制作~

 1年生で行なった陶板タイルの経験を生かし、使う相手や用途・機能を考えた器づくりを行います。はじめは、生徒にも馴染みのある「茶碗」の制作を通して、使いやすさや形の美しさについて考え、陶芸の基礎を学びます。

「小鉢」の制作では、家庭の食卓にのぼる料理を具体的に想定しながら、それらをよりおいしく頂くことのできる形やデザインについて、考えを深めます。成形は土の乾燥が緩やかな梅雨の時期に行い、夏季休業を利用して焼成しています。

7月:命を吹き込むアニメーション

 アニメーションの授業では、「スピード」や「間」の違いによる印象や感じ方の変化に着目させながら、動きの面白さや映像表現の特性を学びます。本校では、文化祭でのクラス発表や委員会活動・部活動の紹介などを動画で行っており、撮影や編集の場面でこれらの学びを活用できるようにしています。

8~10月:ビビッと伝える!アプリのマーク

 1年生のマークのデザインを発展させた「アプリのアイコンデザイン」では、アプリの内容やターゲットとなるユーザーを設定し、見やすく分かりやすいアイコンロゴを制作します。制作には、描画アプリを活用することで、作品画像を共有した相互鑑賞やデザインの試行錯誤が容易となり、人や社会を豊かにするというデザインの本質により迫ることができます。また、ピクトグラム等の簡略化した形を表す工程はアプリの操作練習に最適で、操作に慣れた生徒にも指導者となってもらいながら、互いに教え合う授業を展開しています。完成したアプリのプレゼンテーションは、英語のスピーチの授業と連携して行います。デザインの意図を英語で説明させることで伝えたい内容が整理され、自身のデザインを俯瞰して捉える視点が強化されます。また、「伝えたい内容」が先にあるので、英語科の先生も指導がしやすいというメリットがあります。


※上記の画像は、昨年の2年生が取り組んだ校内ピクトグラムを制作する題材での様子です。

10~1月:木との対話から生まれるバターナイフ

 10月からは、技術科で学んだ木材加工の経験を生かして「バターナイフ」の制作を行います。「木との対話」と銘打つことで、アイデアを単に形にするだけでなく、素材の特性に寄り添う視点や素材を生かすことで感じられる美に気付かせたいと考えています。

2~3月:思わず二度見する物件

 年度末には、レオナルド・ダ・ヴィンチに関する評論文を取り上げる国語科の授業と連携して、ルネサンス美術と遠近法について学び、だまし絵や錯視の表現にも触れながら「不思議な物件」の絵を制作します。また、西洋と日本の空間表現の比較鑑賞をすることで、双方の美術文化の違いやよさを捉え、3年生の修学旅行へつなげたいと考えています。

執筆者紹介

吉田浩気
横浜市立篠原中学校 教諭

 

○経歴
2012 武蔵野美術大学大学院造形研究科修了
2012〜横浜市立谷本中学校
2018〜横浜市立篠原中学校 勤務