ここがポイント
2年生という学年
中学生の3年間での成長は目を見張るものがあります。学習指導要領では1年生と2年生及び3年生といったといったように、2つに分類がされてはいますが、成長という観点から考えると学年の特徴の把握やそれゆえの指導上の留意点が存在します。そのため学年ごとに学習内容は吟味すべきではないでしょうか。それゆえ教科書も3冊の編集構成がよいように感じます。中学生全体を俯瞰するように見てみると、個人差はもちろんありますが、学年ごとに成長の特徴がよく感じ取れませんか?
1年生では美術という新たな学びとの出会いを新鮮に受け止める様子が感じられるのですが、2年生は発想が学習を後押しし、個々の心の中で広がっていく様子が見て取れます。その内容は発想でもあるのですが、ちょっと失礼な言い方をすると「妄想」といった個人の嗜好が左右するような自由な世界を形成することがよくあります。それは青年期に達した面がある一方、まだまだ各個人のアイデンティティが確立していないことに起因するのかもしれません。しかし、ここに2年生の豊かさや面白さが内在します。自由気ままな想像の世界は新たな価値を生み出したり、考えもつかなかった発想を生み出したりするのです。教師は子どもたちから表出される言葉に耳を傾け、子どもたちに教わるように寄り添うことが大切です。あなたは子どもだったころの世界観を思い出せますか?
2年生の子どもたちに対する町田先生の指導法の妥当性
町田先生の指導法は一貫して、技術的な面を鍛え上げ、作品の出来栄えをレベルアップする方向性にあるようです。この指導法は、子どもたちの「できた!」という成就感をもたらすと同時に自分自身の能力に肯定的な相対評価をもたらします。この授業で身に着けた技術力は作品制作に大いに生かされることでしょう。そのために「またやりたい」「もっと挑戦したい」という授業に活力をもたらす力も持っています。
今回の授業に登場した男子生徒が「高級なプラモデルを組み立てている感じ」といった発言をしています。ここにこの指導法の考えなければいけない点があるのです。町田先生は優秀な美術教師です。そして生み出したのが授業のハイレベルマニュアルでした。皆さんは授業をマニュアル化できると思われますか? この授業マニュアルは指導案とはまた別のものでした。いろいろなご意見があることでしょう。しかし、井澤先生の授業で成長してきた生徒たちの中にはこのマニュアルと同化できない生徒が出てきました。なぜでしょうか? でも本人の井澤先生自身はまだ気づけていません。困りましたね。
(シナリオ・監修、文 川合 克彦)