先輩からのアドバイス vol.27
【マンガ】社会で生きている美術の学び

指導や授業で、つまづきがちな悩みや疑問をとりあげ、ベテラン教師から読者と同じ目線で問題解決へのアドバイスを提案します。

ここがポイント

育成したい資質・能力の三つの柱
 文部科学省は新しい学習指導要領において、各教科で育成したい資質・能力を三つの柱にまとめました。
 ①知識及び技能
 ②思考力、判断力、表現力
 ③学びに向かう力、人間性等
 以上、三つの学力の要素がそれです。その上で評価の観点をそれぞれ、「知識・技能」、「思考力・判断力・表現力等」としたのですが、三つ目の「学びに向かう力、人間性等」は観点別評価において見取れる部分と、観点別評価にはなじまず個人内評価を通じて見取るべき部分があると判断され、観点別評価の三つ目の観点は「主体的に学習に取り組む態度」とされました。そして、個人内評価されるべき要素を「感性、思いやりなど」としたのです。しかし、美術科という教科において最も大切に育成するべきことに「感性、思いやりなど」の要素があるのではないでしょうか。学びに向かう姿は追うことができますが、学びに向かわせる心のエネルギーはどこからきてどのような展開で発揮されるのかに点数を付けることはできません。私たちは子どもたちが学び身に付けていく「学力」には「学んだ力」と「学んでいく力」の二つの側面があるということを忘れてはならないのです。

社会で生きている美術の学び
 子どもたちが美術の授業で育んでいく心の豊かさは、彼らが生きていく上で何を生み出していくのでしょうか?
 社会で息づく美術の力は新たな作品や商品デザインなどで発揮されるだけではありません。新たな「もの」や、「こと」を生み出す心の土壌を培うことこそ美術の持っている特性と言えはしないでしょうか。
 例えば、教わった知識は教わったままではただの文字列です。しかしそこに価値を感じ取り、新たなイメージをつくり出していく心の舵取りをするのは「感性」の力です。豊かで思いやりのある心からは、人にやさしい発想でつくられる企画が現れるでしょう。Society 5.0の時代、最も重要なカギを握るのは美術科などで育まれる「感性、思いやりなど」の人間性のよさなのかもしれません。

(シナリオ・監修、文 川合 克彦)