ここがポイント
社会とつながる美術の力
学習指導要領では、変化の激しい時代に向けて、「生きる力」の育成をねらいとして各教科等の内容について工夫ある指導を求めています。美術の指導内容も、芸術を追求する力の育成ではなく、将来の多様な生活や仕事などの場面で活用される「ものの見方や表現力」の育成が示されています。近年、ビジネスの世界でも、デザインやアート思考、またビジュアル感覚を求める企業が増え、プレゼンテーション等ではその感性や能力が重要な力となって仕事が行われています。 美術の力は生活や仕事に不可欠な力であることを気づかせると同時に、授業を通して仕事の進め方や社会の仕組みにも目を向けさせたいと考えます。
他者と関わる題材設定
社会に目を向けた授業づくりでは、発達の段階にあわせて、身の周りの題材から、学校外、地域の課題、国の課題を考えるというように幅広い設定が可能です。たとえば、「○○さんへのプレゼントをつくろう」から「緑化運動や明るい選挙のポスターづくり」まで題材は様々です。授業展開では、アイデアスケッチを始める前に、相手のことや対象を取り巻く問題をリサーチして、考えを整理した上で取り組ませることが学習の深まりやアイデアを生むことにつながります。将来を見つめ、他者との関わりやこれからの社会づくりを視野に入れた題材設定は、美術の授業を通して生き方や人間形成を図る上で多様な価値を含む取り組みになります。
授業づくりのために
授業づくりを進める上で必要なことは、教員の情報収集能力と課題発見能力、外部との折衝力です。まずは、美術の題材につながりそうな課題を発見したら、内容によって管理職等と相談をしながら実現に近づけることが重要です。取り組みの種類や規模によっては、学年から学校全体に広げたり、地域を巻き込む課題に発展したりします。外部と交渉したり連携したりして、子供たちにとって価値の高い授業になるように展開を考えることが大切です。
(シナリオ・監修、文 菊田 寛)